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ミャンマーが、アジア最後のフロンティアとして世界の注目を集めるようになって久しい。2011年3月の民主化以降、外国企業の投資が飛躍的に増加し、最近では特に2016年10月の米国による経済制裁の解除が外国投資を加速させています。
ミャンマーは、中国、インド、タイ等と国境を接し、その中間に位置することから、それぞれの国を繋ぐ物流ルートとして期待されており、かつそれぞれのマーケットに直接輸出できる製造拠点としても有利な条件を有しています。このような地理的好条件、安くて豊富な労働力、マーケットとしての潜在力を評価され、2016年~2018年の多国籍企業有望投資先14位(UNCTAD世界投資報告2016)にランクインしています。
また、法制度等のビジネス環境の整備も進んでいます。2016年10月18日にミャンマー投資法(新投資法)、2017年3月30日にミャンマー投資法施行細則が制定され、次いで2017年中に新会社法が制定される予定です。また、2016年10月25日発表の世界銀行調査において、起業手続改革進展度世界一になるなど、課題であったビジネス環境も急速に改善が進んでいます。
ミャンマー人は親日的で勤勉な性格と言われ、ミャンマーには日本企業が進出する基盤があると考えられています。実際に、日本とミャンマーの官民共同で開発されたミャンマー初の経済特区であるティラワ経済特区が2015年9月に開業して以来、続々と日本企業が進出し、2017年2月には追加開発工事もスタートしています。また経済特区に限らず、ミャンマー日本商工会議所(JCCM)の会員数が、民主化以降7倍弱増えるなど日本企業の進出が急速に増えています。
第一回は、ミャンマー投資法(以下「投資法」)に基づく投資規制について取り上げます。
(1)新しい投資法の制定
2016年10月、投資法の制定により、内国民投資法及び外国投資法が廃止されました。これによって、従来異なる法律の適用を受けていた外国投資及びミャンマー人による投資は一つの法律の下、規制されることになりました。2017年3月末には、投資法の細則が施行され、ついに投資法に基づく運用が開始されました。
なお、経済特区に関しては扱いが異なるため、このコラムでは取り扱いません。
(2)投資規制に関する4つのカテゴリー
投資法の下では、すべての投資は、①禁止投資、②ミャンマー投資委員会の許可が必要な投資、③制限投資、④その他の投資の4つのカテゴリーに分類されます。
①禁止投資とは文字通り、そもそも行うことが禁止される投資です。「ミャンマー国に危険・有害な廃棄物を持ち込む、又はもたらす可能性のある投資活動」や「ミャンマー国内の各民族の伝統的な文化や慣習に影響を与える可能性のある投資活動」などがこれにあたります(投資法41条)。
②一定の大規模投資等については、その投資の実施に際してミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commission)、通称MICの許可を取得することが義務付けられています(投資法36条)。具体的には、「予定投資額が1億ドルを超える投資」や「情報、通信、医療、バイオ等の技術、交通インフラ、エネルギーインフラ、都市開発インフラ、新都市、採掘資源または天然資源及びメディアの各セクターに対する投資で、予定投資額が2000万ドルを超えるもの」などがこれにあたります(投資規則3条)。
③制限投資とは、投資を行うに際して一定の制限が付されている投資をいい、(i)政府のみが行える投資、(ii)外国企業が行えない投資、(iii)外国企業が内資企業との合弁でのみ行える投資、(iv)関連省庁の承認が必要な投資に分類されます(投資法42条)。
それぞれ(i)には9種類、(ii)には12種類、(iii)には22種類、(iv)には126種類の投資活動が規定されています(MIC通知2017年15号)。 従来外資には禁止されてきた小売・卸売が、今回の改正で外資にも完全に開放されるのではないかと期待されていましたが、結果的には、ミニマーケット、コンビニエンスストア(床面積が1万平方フィート又は929平方メートル未満のもの)は(ii)外国企業が行えない投資として分類され、小売業、卸売業全般については(iv)商業省の承認が必要な投資に分類される形で規制されることとなりました。関連省庁の承認手続については、現在ガイドラインなども定められておらず、手続の明確化が期待されます。
なお、(iii)については、内資企業の出資割合は20%以上でなければならないとされています(投資規則22条)。
④その他の投資とは、上記①~③に含まれない投資を指し、その実施に際しては、上述のような制限はありません。もっとも、その他の法令で定められている規制には従う必要があります。
ミャンマーへの進出に際しては、行おうとしている投資が上記2(2)のいずれのカテゴリーに当てはまるかについて、まずは投資法、投資規則及び関連通知を確認・検討することとなります。
いずれに該当するかが明らかでない場合は、事前の投資審査手続を利用して、MICに照会することもできます(投資規則4章)。ただし、MICは、当該照会に対する回答に拘束されないため、実際に投資申請した段階でMICの見解が変更される可能性があります(投資規則32条)。
弁護士 良田 郁也
国際法務